境界が曖昧になるチームとクリエイティビティ(稲水伸行)

  • 境界が曖昧になるチームとクリエイティビティ1(稲水伸行)

    第1回「境界が曖昧になるチーム」
    まず、日本マイクロソフト社の働き方改革の事例をもとに、チームの境界が曖昧になってきていることを紹介する。このような状況では、チームは「ダイナミックに変化する参加メンバーの結節点(DPH: Dynamic Participation Hub)」として捉えられる。DPHとしてのチームでは、個々の参加メンバーはあたかもブローカー(異なるコミュニティを橋渡しする仲介者)のような役割を果たすことが期待される。その意味では、社会ネットワーク理論におけるブローカーに関する議論が参考になる。社会ネットワークのブローカーとの間にクリエイティビティと正の関係があることが確認されてきた。一方で、DPHとしてのチームでは、個々の参加メンバーのアテンション(注意)のマネジメントも重要となる。第1回では、アテンションの幅を広げすぎることの危険性についても紹介する。その上で、DPHとしてのチームでクリエイティビティを高めるにはある種のトレードオフがあることを問題提起する。

  • 境界が曖昧になるチームとクリエイティビティ2(稲水伸行)

    第2回「ゴミ箱モデル」
    第1回の講義で触れたトレードオフを考える上で示唆的なのが、あいまい性下の組織の意思決定モデルである「ゴミ箱モデル」である。このモデルは、組織の中を選択機会、問題、解、意思決定者がそれぞれ独立に流れており、あるタイミングで偶然これらが結びついた時に意思決定(問題解決)が行われると考える。第2回では、ゴミ箱モデルとそのシミュレーションの結果について解説する。特に、DPH化が進む中でクリエイティビティを高めるために必要な条件は何かについて検討する。さらに、ある企業における従業員の行動データを用いた実証についても紹介する。